1500億円の市有財産を「寄付」する大阪市の高校移管問題が住民訴訟へ
幸田泉ジャーナリスト、作家
10/9(土) 8:04
大阪市立の高校22校が来年4月1日に大阪府に移管される問題で、大阪市民5人で作る「大阪市民の財産を守る会」は10月7日、大阪地裁に住民訴訟を提訴した。筆者も原告の1人である。大阪市監査委員に住民監査請求を行い、先月「棄却」の結論が出たため、住民訴訟に踏み切った。この高校移管では、市立の高校の土地、建物はすべて大阪府に無償譲渡されるが、大阪市公有資産台帳で計約1500億円の巨額財産である。法廷では、「二重行政解消」の方針のもと、大阪市の財産や権限が大阪府に移し替えられる府市の異常な関係を法廷で明らかにしていく。(※大阪市立の高校は現在21校。うち3校の再編整備により、来年4月時点では一時的に学校数が増え22校になる)
大規模な高校移管は大阪都構想が発端
明治からの伝統を持つ大阪市立の高校を大阪府に移管する計画が持ち上がったのは、大阪市を廃止する「大阪都構想」の実現に向けて行政が動き始めた頃である。2011年12月、大阪府と大阪市は共同で「大阪府市統合本部」を設置。府市統合本部とは2015年に大阪都構想が実現して大阪市が廃止されるのを前提とし、府立と市立で役割の類似する施設やサービスに短絡的に「無駄な二重行政」のレッテルを貼るという特殊なミッションを行う組織だった。
それに基づき、大阪府知事、大阪市長ら府市幹部が出席する「府市統合本部会議」は2014年1月、「新たな大都市制度への移行時期に合わせ、市立の高校を府に移管する」との方針を決定。新たな大都市制度とは大阪都構想を指す。大阪都構想が実現すれば大阪市は廃止されるので、市立の高校は府が運営するとしたのが「高校移管」であった。
大阪都構想は2015年と2020年、大阪市民を対象とした2度の住民投票で否決されてとん挫した。ところが、2020年11月1日の2度目の住民投票後、吉村洋文・大阪府知事と松井一郎・大阪市長は、大阪市の都市計画権限を大阪府に委託する条例の制定や、大阪市立の高校の大阪府への移管など、大阪都構想の「分割実施」のような施策を次々と打ち出した。「大阪市廃止」は住民投票に阻まれるので、大阪市の権限や財産を個別に大阪府に移し替えようというのである。政令指定都市としての大阪市の存続を選んだ住民投票の民意をないがしろにしているとしか言いようがない。
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