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2025年万博をSDGs万博にするために、会場変更の検討および持続可能性評価の実施を求める声明文
日本国際博覧会協会は2025年万博を、SDGsを達成するための万博と謳っています。しかしながら、万博の会場となる夢洲まちづくり計画はカジノ誘致が前提となっており、SDGs達成のための万博が、カジノのための街づくりに利用されている状況です。(SDGsが目標とする持続可能な社会とカジノ誘致が相反することは言うまでもありません。)2025年万博をSDGs万博とするために、今一度、SDGsの理念に立ち戻り、会場の選定プロセスから考えなおすべきです。
さらに、夢洲を会場として選定した市民への経緯説明は不十分であり、加えて、以下のような問題への対応が不十分であることからも、夢洲を万博会場にするべきではなく、会場変更を検討すべきであると考えます。
①「国内及び国際的な輸送交通手段と(多くの人が無理なく来場できる)アクセスの確保」
②「無理のない開発計画と博覧会終了後の社会的影響への配慮」
③「会場の立地条件と跡地利用計画における自然環境の保全」
これらの問題を考慮するならば、当初から日本国際博覧会協会が候補地としていた、他の候補地のほうが明らかに万博開催に適していると言えるでしょう。まして夢洲および周辺地域は、災害時の津波や浸水、遡上高、津波火災、液状化による護岸沈下等の防災上の問題や、アクセス不足による来場者の安全性からも非常に問題の多い島です。あまり知られていないことですが、夢洲は、大阪府の生物多様性ホットスポットAランクエリアです。数千を超える渡り性水鳥の貴重な餌場・休憩地であり、緑の少ない大阪市にとっても貴重な自然再生の場です。2025年万博が、この貴重な環境の破壊に結びつくようなことは避けなければいけません。
さらに最低条件として、愛知万博やミラノ万博が実施した環境影響評価の理念の継承が必須と考えます。そのためには、2025年万博がSDGsの達成に貢献することが明確に理解できる持続可能性評価を、日本の国内制度に先行して実施するよう、BIEから指摘することを強く要請します。
<別表1> 持続可能性評価について
1.大阪万博に求められるSDGsの取組み
①計画段階から事業終了後の2030年まで、万博を実施したことによるSDGsへの貢献を計測できる指標を持つこと。
②その指標は、大阪・関西地域の歴史、現状と課題に即したものであること。
③また、その指標は市民参加を保証するプロセスにより設定され、検証し、評価されるべきものであること。
2.評価指標について
たとえば、SDGsによる評価指標を以下のように設定し、万博開催前、期間中、閉会後、閉会後3年後、5年後(2030年)において、各指標の到達状況を確認できるようにすることを提案します。以下の評価指標は、あくまで例示であることを申し添えます。
(1)自然環境
①気候変動対策(目標13)
・関西エリアの温暖化ガス排出量
・温暖化関連現象
②海の豊かさ(目標14)
・海産資源量
・水辺の生物の生息面積(干潟と湿地の合計)
③陸の豊かさ(目標15)
・緑地面積とそこでの希少な植物・昆虫類・両生類・哺乳類・鳥類の生息可能面積の総和
・森林減少を引き起こしている産品〔木材、紙、パーム油、大豆、牛肉、カカオ、ゴムなど〕において企業グループとして森林減少へ関与してないことを確認する基準策定やトレーサビリティの確認、原産地等情報開示
(2)社会環境
①飢餓をなくす(目標2)
・相対的貧困率
・生活保護の割合
②健康と福祉(目標3)
・外国人を含む社会的弱者の数
・支援体制の充足状況
③教育(目標4)
・ESD(持続可能な開発のための教育)の進捗状況
④ジェンダー(目標5)
・民間企業の女性の正規雇用者の割合
・民間企業の性別有給育児休暇の日数
・女性障がい者の正規雇用の割合
・女性管理職の割合
・男女の賃金格差
⑤水・衛生(目標6)
・大阪湾に流れ込む河川の水質と汚染物質の量
⑥不平等をなくす(目標10)
・女性、外国人、被差別部落出身者、疾病、性的マイノリティ(LGBT)、ホームレス、刑務所 出所者に対する差別の相談件数
⑦持続可能な都市(目標11)
・関西エリアの大気汚染濃度の推移
・交通事故者数
・仙台防災枠組2015-2030に沿った優先行動・ターゲットの実施
・全ての文化及び自然遺産の保全、保護及び保存における総支出額
⑧平和と公正(目標16)
・児童福祉司の数
・環境影響評価図書等の情報公開の実施件数
・刑法犯認知件数
・児童虐待相談対応件数
⑨パートナーシップ(目標17)
・経済産業省の途上国支援プログラム予算額
・大阪府の途上国支援プログラム予算額
・途上国支援プログラム事後評価値
(3)経済環境
①貧困(目標1)
・年金無受給者の数
・小学校給食費未納者の数
・外国人の生活保護受給世帯数
・ホームレス支援の予算
②エネルギー(目標7)
・消費電力のうち再生可能エネルギーの割合
・熱・動力エネルギーのうち再生可能エネルギーの割合
・ライフサイクル温室効果ガス排出量の観点から危惧があるパーム油や木質バイオマス発電等の禁止状況
・万博全体として脱炭素化を実現するためのライフサイクル温室効果ガス排出量
③働きがい・経済成長(目標8)
・関西地域でのESG投資額
・大阪市・大阪府・関西の一人当たり可処分所得の伸び率、失業率
④産業・技術革新(目標9)
・地球温暖化関連の研究開発従事者数と研究費
⑤持続可能な生産と消費(目標12)
・フードロスの量
・エコリーフ環境ラベル取得製品数
・環境ラベル(EPD)取得件数
・関西のフェアトレード商品の売上高
・関西の食料自給率
・森林減少ゼロや絶滅が危惧される生物の生息地保全、人権尊重を遵守する第三者監査を行っていることの確認
<別表2>自然環境における持続可能性評価について
About Assessment of sustainability in the natural environment
公益社団法人 大阪自然環境保全協会
Nature Conservation Society of Osaka(public interest incorporated association)
(目標13)気候変動対策/Goal 13: Climate action
緑地の少ない大阪市のなかでは、夢洲は、とくに広大な緑地及び湿地面積を持っており、大阪湾岸の気候空気清浄のためにも貴重な地域。
(目標14)海の豊かさ/Goal 14: Life Below Water
夢洲は、海岸の99%が人工的に改変された大阪湾における貴重な汽水の池がある島であり、時には1万ちかくの渡り鳥が立ち寄る。
(目標15)陸の豊かさ/Goal 15: Life on land
島の一部は珍しい塩性湿地となっていて、生物多様性に富み、絶滅危惧の植物も見つかっている。
今年5月上旬、夢洲に絶滅危惧種の渡り鳥コアジサシ(Sterna albifrons)のコロニーができた。場所は同じ島の万博予定地の隣接地。
しかし、そこでは環境影響評価を行わずにIRカジノの建設が進められている。
夢洲のような独立した島の場合、島全体の自然環境を総合的に調査する必要がある。でも、まだ調査していない。
(目標16)平和と公正/Goal 16: Peace, justice and strong institutions
大阪市は、ここが海であった時代に行った昔の環境影響評価だけを根拠として、その後埋立途中に発達した生態系を調べることなく土地造成を継続している。
以上
【賛同団体】<順不同>
特定非営利活動法人 AMネット
市民マニフェスト 大阪UP
ジュゴン保護キャンペーンセンター
特定非営利活動法人 関西NGO協議会
一般社団法人 SDGs市民社会ネットワーク(略称:SDGsジャパン)
気候ネットワーク
大阪を知り・考える市民の会
大阪カジノに反対する市民の会
あかん!カジノ女性アピール
カジノ問題を考える大阪ネットワーク
全大阪消費者団体連絡会
どないする大阪の未来ネット
社会福祉法人大阪ボランティア協会
(一財)アジア・太平洋人権情報センター(ヒューライツ大阪)
特定非営利活動法人 地球環境市民会議(CASA)
CODE海外災害援助市民センター
STOP!カジノ大阪
市民のための行政を求める会
公益社団法人 大阪自然環境保全協会
熱帯林行動ネットワークJATAN
ウータン・森と生活を考える会