討論集会では、まず主催者あいさつとして、中野雅司さん(大阪を知り・考える市民の会)が発言しました。
中野さんは「衝撃的な選挙結果ではあるが、事実を受け止めて、そこから出発するしかない。自民党内部に維新支持が形成されたことに驚いたが、それは共産党が候補者を支持したからではない。衆院補選12区の結果を見れば、そこでも自民党支持の66%しか自民候補に投票しなかった。選挙前は、入れ替え選挙に拒否反応が強かったが、2週間で完全に逆転された。都構想でも同じことが起きた。選挙戦術でも際立つ違いがあった。こちらは街頭での演説内容は候補者任せだったが、維新は同じことを何度でもわかりやすく説明していた。果たして、今後も自民候補に相乗りすることでいいのか、という思いはある。これからが、本当の意味での地方自治が始まるのではないか」とダブル選挙と今後について話されました。そして、最後に5月12日に開かれる学者の会のシンポジウムへの参加を訴えました。
メインのお話は、薬師院仁志さんの講演「ダブル選挙結果と市民運動の方向」でした。以下、講演の要旨です。文責は、どないねっとにあります。
選挙戦略という点がすべてだった。反維新候補の側の選挙戦略がまずかったのは確かで、維新は単独政党のため、誰もが一貫した主張を言いやすかったことはある。自民票のかなりの部分が維新に流れた。革新系の票までもが維新に流れた。その背後には、長く維新が野合批判をしてきたことがボディブローのように効いてきたということがある。今回だけに限らず、うまく「野合」レッテルを貼られた。
渋谷での交通事故で、ネット上で「上級国民は実名報道されないのか」という声があふれた。亡くなった被害者に連帯する輪が広がる以上に、加害者を叩く輪が広まってしまうという世の中の風潮がある。「上の人たちはつるんで甘い汁を吸っているのではないか」という感情が社会に蔓延している。そのため、自民も共産も既得権者だという感情をかき立てやすかった。
安倍政権に批判的な野党票が維新に流れたのは、「自民党と組んでいるところに入れたくない」という思いがあったのではないか。有権者は、なかなか国政レベルと大阪とを分けては考えない。柳本さん、小西さんは徹底的に自公でいくべきだったという声もあった。共産や立憲民主とはつるんでいないということをはっきりさせて、自民・公明票を固めた方が良かったのではないかという意見だが、そうすれば反安倍の革新票は取れないことになる。
維新の側が単一争点=都構想と住民投で選挙を構えてきた。そうであれば、反維新も単一争点として「大阪市をなくすな」で選挙をやるのは当然で、それを「野合」というのはおかしいのだが、票にはならなかった。維新は単一争点だというのなら、「大阪市廃止・分割」というポスターを貼ってまわるべきだったのだが、それはやらなかった。大阪市役所はなくなるが、大阪市はなくならないと言っていた。「野合」批判を言いつつ、大阪市廃止を言わない。一生懸命に都構想はおかしいと言って、まじめに都構想をしゃべっていたのは小西さんと柳本さんで、維新は「大阪の成長を止めるな」と言っていた。
カジノにしても、一般論でカジノ賛成・反対という人がいるが、具体的に大阪の夢洲でカジノをやることに賛成か、反対か、が問われなければならない。
維新に入れた人は有権者の三分の一にも満たない。維新支持者ばっかりが投票に行った。知事・市長が途中で辞めてまで再選挙をして、府議・市議選に絡ませても、投票率は52%少しだ。イメージで投票している、具体的に都構想がどうか、ということを意識して投票しているとは思えない。
維新の選挙戦略「成長を止めるな」は、成長を止めようとする者がいる、それは野合している既得権者だ、という意味だった。それは「既得権者に甘い汁を吸わすな」という感情をかきたてるものだった。維新に入った票というのが、本当に大阪を発展させようという意識で入れたものとは思えない。「上の者がつるんでいることで、自分たちが損をしている」という感情が煽られた。維新は、単一争点にまきこんで「野合」批判、「既得権益者」批判をした。中小企業の状況が悪くなったのも「上の人がつるんでいる」からというわけだ。
そういうことに不満を持っている人たちが維新に票を入れた。西区など転出入率が高い地域で維新支持が多い。大阪に根付いていない人たちで、ある程度裕福な人たちに維新支持が多い。「生活保護に自分たちの金が使われている」といった負担感を強く感じている。それをやっているのは既得権益者だ、共産党は自民党と組んでまで既得権益を守りたいのかという言説になる。「止めるな」という言い方は、あいつらが「止める」ということを意味する。
住民運動の方向としてどう考えたらいいのか?住民投票では市民運動の多様性を発揮できた。市民運動がたくさん街頭に出て訴え、中身をしゃべることができた。しかし、選挙の時にできることは限られていた。メガホンで候補者名を叫ぶだけだった。維新支持者にとって、自分たちとは違う人たちの多様性が逆に「つるんでいる」というイメージを与えた。税金を多く払っているのに、それに見合うサービスを受けていない、負担するばっかり、という自分たちにとって損か、得かで判断している。大阪をみんなで繁栄させるという発想はない。大阪の成長を本当に望んでいるのではない。
困難点は、正しいことを言い続けるということで、維新の選挙戦略にはめられたということ。では選挙戦略に徹すればいいのか?それなら市民運動の意味があるのかという問題がある。4年後に勝つためには戦略に徹しなければならないが、そうして勝っても維新的なものが残るだけではないのか、という疑問が出てくる。しかし、勝つためには、ある場合には戦略に徹することで合意できるような運動を作らなければならないのではないか。
講演に続いて、服部良一さんが、韓国の自国民向けカジノ「江原ランド」の視察報告をおこないました。日本と同じくギャンブル依存勝率が高い韓国でのカジノの実態や、カジノによって生活や家族・会社を壊してしまった人がいるという話は、これからの大阪にとっても人ごとではない問題だと感じました。
質疑・討論の中では、「住民投票のあとで市民運動の動きが止まった。維新は負けた翌日から運動を続けていた。街頭での運動を続けていくことが大事。維新のチラシなどのファクトチェックのサイトを立ち上げられないか?」という意見や、「なんで大阪だけ、二重行政とか、都構想とか、言うのか?」という質問が出されました。薬師院さんから「ファクトチェックの準備はしている」「二重行政とか、都構想とかは、大阪府民や市民から出てきた問題ではなかった。維新の側が持ち出したもの。いまだにきちんと説明しない。副首都なんて、世界のどこにもない。架空だから、無限にイメージを描ける、好きなことを言える。大阪都もできない、架空の存在だ」とのお答えがありました。
討論集会の最後に、馬場徳夫さんがまとめをおこない、次の3点が提案されました。
① 今日の内容を参考にしてもらって、地域でどんな運動ができるのか、具体化を図っていただきたい。
② 夢洲開発の転換について、パブコメを募集している。自分の思う意見を出していただきたい。
③ 各政党・各会派に市民運動から意見を出す。われわれの意見を法定協に反映させる政党が議席を減らした。5月28日にカジノ反対の一大イベントをおこなうので、ぜひ結集を。