カジノと民営化の問題について。過去20年以上にわたって、大阪府・大阪市の行政に関わってきた上山信一は、「新しい公共」という概念を取り出した。つまり、少子高齢化社会を迎えて、これまで国や自治体に私たちが求めていたものを全て見直さなければいけない。ここから出発して、民営化という発想が出てきている。カジノという問題でいうと、今まで許したことのない民間賭博を、事もあろうに国や行政が進める、大阪で言えば府知事・市長の両方が誘致したいと言っている。こんなことは、つい最近までは大阪だけだった。こういう例は、世界でもレアケースだと思う。国や行政がカジノを推進するということは、国や自治体に対する常識を変えていかなければならないというショッキングな出来事になりはしないか。これを許すのかどうかという闘いになっている。
落語家の笑福亭竹林さんが「カジノ闘いは、大阪の都市格を取り戻す闘いだ」と言われたことに、私は全くその通りだと思う。
「忖度」という言葉がある。昨年11月には、自民党の二階幹事長は、カジノ法案を国会で通すのは難しいと言っていた。安倍さんも「ヒラリーが大統領になっていたら、カジノ法案は通さなかった」と言った。なぜそうだったのか?ラスベガスのカジノ経営者であるシェルト・アンデルセンという人物は、トランプに2億5千万ドル(約25億円)の献金をした。さらに大統領就任式に関わっても、彼はトランプに5億円の献金をしている。この事実を安倍さんはつかんで、二階幹事長に「カジノ法案の成立に万全を期してほしい」と言った。つまり、トランプが勝ったことで、「忖度」が働いたのだろう。森友事件と同じ構造だ。
松井知事は「目の前にぶら下げられたニンジンを食わないバカがどこにいる」と言った。1兆円という投資をしてくれるのが他にどこにいる、金さえ落ちくるのであれば少々は我慢してください、そのお金で社会保障や老人福祉をやるのがどこが悪いんですか、この考え方は原発や沖縄の問題と共通しているのではないか。このことを最初に訴えたい。
地下鉄の問題が話されたが、1991年に地下鉄値上げの話があった時に、地下鉄の財務分析を依頼された。そうすると、大阪の地下鉄は一挙に赤字が出た。それは、補助金を特別利益として計上していたのを資本(元手)に繰入れるようになったから。補助金をどちらに入れるかは企業会計上では任意だが、このように操作して赤字を出した。
国鉄の民営化をした時には持株会者が日本では認められていなかった。今はそれができるのに、JR東海の5000億円の利益で北海道や四国を補助するのは可能なのに、そういう議論がどこからも出てこない。だから、その利益を使ってリニア新幹線を作るという話が出てくる。こういうことに終止符を打たなければならないと思う。
私が学生の頃、国家が果たすべき役割は「社会的共同業務」という言い方をしていた。だから、その負担は公平に、能力のある人は応分の負担をという考え方だった。1974年の所得税法では、8000万円以上の所得については所得税・住民税合わせて93%だったが、今は50%になっている。支払い能力に応じて税金を払おうじゃないかということを潰してきた。潰してきた理屈は、「公共サービス」「社会サービス」。例えば、教育なら、良い教育を受けたかったらその分授業料を払え、払えなかったらそれなりの教育でかまわないのではないか、という考え方がはびこってきた。上山さんが「公共性なんか潰してしまえ」と20年前から言いまくってきた。病院や地下鉄を潰そうとしているのは、それ以外には潰せるところがないから。
NHKの「関西熱視線」という番組で、カジノは非常にもうかるといっていた。しかし、カジノの儲けとは負けた人のお金だ。1兆円の投資を7年間で回収するには、1年1400億円の利益が必要。どの利益を出すには、年間4兆7千億円をすってもらわないといけない。1時間5億4千万円になる。それだけの依存症の患者を生み出さなければ、投資は回収できない。これが賭博ビジネスの本質である。
50ページのパンフレットを作って、学習会の出前をやっているので、どんな小さな学習会でも呼んでいただきたい。